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有名すぎるビジネス書で、知らない人のほうが珍しい。だが僕はここ最近初めて読んだ(2021年4月)
最近読書に目覚めた10代や20代の若い人など、まだ読んでいない人は、このブログを全部見るだけでもいいから、読んでください。
2019年で発行部数2900万部を超えるベストセラーである(Wikipedia調べ)
(15冊目)「チーズはどこへ消えた?」スペンサー・ジョンソン 要約 感想 無料 あらすじ
まず僕が感じたのは「チーズは食べたら消えるよね」ってことです。単純な感想ではありません。
チーズに例えたのがすごいと思うんです。
なくなったかどうかわからないことについて議論する物語をチーズに例えてることが、
真実「食べたら消える」ということを暗に伝えているんですよ。僕らは「それ」を食べながら、もう消えかかっていることに気づかなければいけない。
変化していく物事を先回りして予測して未来への対応を講じていかなければならない。
あーそうか、チーズと同じだったんだ、僕達が手に入れたもの。
だったら、つねに、なくなることを視野に入れる必要がある。
↓以下にその物語を公開しています。1度物語を読まれた方も、2度見ても楽しめるので、読んでみてください↓
物語~チーズはどこへ消えた?~「チーズを手に入れれば、幸せになれる」
昔、ある遠い国に、二匹のネズミと二人の小人が住んでいた。彼らはいつも迷路でチー
ズを探しまわっていた。食料にするためと、幸せになるためだ
二匹のネズミは、「スニッフ」と「スカリー」という名前。小人はネズミと同じくらい
小さく、見かけも行動も私たちにそっくりで、名前は「へム」と「ホー」だ。
ネズミと小人は毎日、自分たちの特別なチーズをみつけようと、長いこと迷路を探しま
わった。
なにしろスニッフとスカリーはネズミだから単純な頭脳しかもっていなかったが、すぐ
れた本能があり、大好きなグリガリかじれる固いチーズを探していた
小人のへムとホーはいろいろな考えがいっばい詰まった頭を使って、まったく別のチー
ズ (真のチーズ)をみつけようとしていた。みつけられれば幸せになり、成功を味わ
うことができると信じていたのだ
このようにネズミと小人は違っていたが、同じところもあった。毎朝、みんなジョギン
グ・ウエアとランニングシューズを身につけ、小さな自宅を出ると、好みのチーズを探
しに迷路へ急いだ
その迷路はいくつもの通路と部屋からなる迷宮で、どこかに美味なチーズがあった。し
かし、暗がりや袋小路もあって、すぐに道に迷ってしまいかねない
それでも、迷路にはいい暮らしができるようになるチーズが隠されていて、そこにたど
りつくことさえできればチーズが手に入るのだ
ネズミのスニッフとスカリーは、単純で非能率的な方法、つまり試行錯誤を繰り返しな
がらチーズを探した。ある通路を進んでいって何もなければ、引き返して今度は別の通路
を探す。そして何もなかった通路は覚えておいて、つねに新しいところへ進んだのだ。
スニッフはよく利く鼻でチーズのある場所をかぎつけようとし、スカリーのほうはひた
すら突き進む。案の定、二匹は道に迷い、袋小路に突き当たることもしばしばだった。そ
れでも、そのうち道をみつけて進んでいった
一方、小人のへムとホーも過去の経験から得た教訓と思考による方法をとっていたが
複雑な頭脳にたより、もっと高度な方法をつくりあげた
二人はうまくいくときもあったが、強力な人間の信念と感情がものの見方を鈍らせてし
まうこともあった。そのため迷路の中で生きるのがいっそう複雑で難しいものになった。
それでも、スニッフとスカリーも、ヘムとホーも、とうとうそれぞれ自分たちのやり方
で、探していたものをみつけた。ある日、チーズ.ステーションCの通路の端で、好みの
チーズを発見したのだ。
それからは毎朝、ネズミも小人もチーズ·ステーションCに向かった。まもなくそれぞ
れの日課ができあがった
スニッフとスカリーは毎日、早起きをして迷路へ急いだ。いつも通るのは同じ道
目的地につくと、ランニングシューズを脱いで両方のひもを結び、首にかける。いつでもすぐ履けるように。それからチーズにとりかかる。へムとホーも初めは毎朝、チーズステーションCに急ぎ、新しい美味なごちそうに舌
つづみを打った。ところがしばらくすると、二人の日課が変わった
少し遅く起き、ゆっくり服を着て、歩いてチーズステーションCに向かうようになっ
たのだ。どのみちチーズがある場所も行く道もわかっているのだ
チーズがどこから来るのか、誰が置いていくのかはわからなかった。ただそこにあるの
が当然のことになっていた
へムとホーは毎朝、チーズ.ステーションCにつくと、腰を落ち着け、くつろいだ。ジ
ョギング·ウェアを壁にかけ、ランニング·シューズを脱いでスリッパに履きかえる。チ
ーズがみつかったので、すっかり気が楽になっていた
「まったくすばらしい」へムは言った。「これだけあればずっと大丈夫だ」小人たちは幸
せになり、うまくいったことを喜び、自分たちは安泰だと思った。
まもなくへムとホーは、そのチーズを自分たちのものだと考えるようになった。チーズ
は大量にあったので、ついに二人は近くに引っ越し、そこで社会生活を築いた
二人はもっと落ち着いた気持ちになりたいと思い、壁に格言を書き、そのうえチーズの
絵まで描いて楽しんだ。格言はこうだ「チーズを手に入れれば、幸せになれる」
「自分のチーズがあればあるほど、それにしがみつきたくなる」
二人はチーズ·ステーションCに友達をつれていくこともあった。山のようなチーズを
見せ、指さして誇らしげに言ったものだ。「すごいチーズだろう、どうだい?」友達に分
けてやるときもあり、やらないときもあった。
「ばくらはそれだけのことをしたんだ」へムは言った。「実際、長いこと勤勉に働いたし、
これをみつけるのは大変だったもの」そうして、新鮮でおいしいチーズを一切れつまみ
口に運んだ
それから彼はいつものように、眠りに落ちた
二人は毎晩、チーズをおなかいっぱい食べてよたよたしながら家路につき、毎朝、自信
満々で、きょうはもっとたくさん食べようと思いながらチーズのところに戻っていった
こうした日々がかなりつづいた。
やがて二人は慢心するようになった。安心しきって、知らないうちに何かが進行してい
ることに気づきもしなかった。
一方、スニッフとスカリーの日課は変わらなかった。毎朝、チーズ·ステーションCに
つくと、あたりの匂いをかぎ、ひっかき、走りまわって、何か前日と変わったことはない
か調べた。それから腰をおろして、チーズをかじった
ところが、ある朝、行ってみると、チーズがなくなっていた
二匹は驚かなかった。置いてあるチーズが毎日、だんだん少なくなっているのに気づい
ていたので、いずれなくなるだろうと覚悟していたし、どうすればいいかは本能でわかっ
ていたのだ。彼らは顔を見合わせると、一つに結んで首にかけていたランニング·シューズをとり、
履いて紐を結んだ
ネズミたちは事態をくわしく分析したりはしなかった、
彼らにとっては、問題も答えもはっきりしていた。チーズ·ステーションCの状況が変
わったのだ。だから、自分たちも変わることにした、
二匹は迷路を見渡した。それから、スニッフが鼻をあげて匂いをかぎ、うなずいてみせ
ると、スカリーが走りだした。スニッフも急いであとを追った。
新しいチーズを探しに出かけたのである
同じ日、へムとホーはのんびりとチーズ.ステーションCにやってきた。二人は、毎日
小さな変化が起きていることに注意を払わなかったから、いつもどおりチーズがあるもの
と思っていた。
二人には青天の霹靂(へきれき)だった
「なんてことだ! チーズがないじゃないか」へムは叫んだ。「チーズがないじゃないか
チーズがないぞ」そう言えばチーズが戻ってくるとでも思っているのか、大声でわめいた。
「チーズはどこへ消えた?」彼は声をあげた。
やがて、腰に手をあてると、顔を紅潮させ、声を張り上げて叫んだ。「こんなことがあ
っていいわけはない!」
ホーは信じられないというふうに、ただ頭を振るだけだった。彼もチーズがあるものと
思いこんでいたのだ。ショックで凍りついたまま、彼は立ちつくしていた。こんなことに
なるとは思ってもいなかった。
へムが何かわめいていたが、ホーは耳をふぎたかった。事態をどうにかしようという
気にもなれず、すべてに目をふさぎたかった。
二人のふるまいはあまり感心できるものではなく、前向きでもなかったが、無理もない
ことだった。
チーズをみつけるのは簡単ではなかったし、二人にとっては毎日食べるチーズがあると
いうこと以上の意味があった。
チーズをみつけることは、幸せになるのに必要なものを手に入れることだった。彼らな
りにチーズに対する考え方があった
チーズをみつけることは、物質的に豊かになることだという人もいた。健康を享受する
ことだという人もいれば、精神的な充実感を得ることだという人もいた。
ホーにとっては、安心していられることであり、いつか愛する家族をもつことであり
チェダー通りの居心地のいい家に住むことだった
へムにとっては、人の上に立つ有力者になることであり、カマンベール丘の上に邸宅を
かまえることだった
二人にとってチーズは重要だったから、これからどうすればいいか決めるのに長い時間
がかかった。しかし、考えついたのは、チーズステーションCをよく調べて本当にチー
ズがなくなったのかどうか確かめることだけだった。
スニッフとスカリーはすぐさま次のチーズを探しにかかったのに、ヘムとホーはうろうろするばかりだった。
二人は、ひどいめにあわされたと、しきりにわめき散らした。そのうちホーは憂鬱にな
ってきた。あしたもチーズがなかったら、どうなるだろう?あのチーズをもとにして将
来設計をしていたのに。
二人は事態が信じられなかった。どうしてこんなことになったのだろう? 誰も注意し
てくれなかった。こんなこと、おかしい。こんなことになるわけがない
その夜、へムとホーはすきっ腹をかかえ、意気消沈して家に帰った。その前に、ホーは
壁にこう書いた「自分のチーズがあればあるほど、それにしがみつきたくなる」
「変わらなければ、破滅することになる」
翌日、二人は家を出て再びチーズ.ステーションCに行った。あのチーズがあるかもし
れないと、まだ期待していたのだ。
事態は変わっていなかった。チーズはなかった。二人は途方にくれ、まるで銅像のよう
にただ突っ立っていた。
ホーはぎゅっと目をつぶり、両手で耳をふさいだ。何もかもいやになった。チーズがだ
んだん少なくなっていたなんて思いたくない。そうだ、突然、どこかへもっていかれて消
えたのだ
へムは繰り返し事態を分析してみた結果、ついに巨大な思考システムをもつ複雑な頭脳
ができあがった。「どうしてこんなめにあうんだ?」彼は問いかけた。「実際は何が起こっ
ているんだろう?」
ようやくホーが目を開け、周囲を見まわして言った。[それはそうと、スニッフとスカ
ーはどこにいったんだろう? あいつら、われわれの知らないことを知ってるん上ゃな
いだろうか?」
へムはあざ笑った。「何を知ってるというんだ?」
彼はつづけた。「あいつら、ただの単純なネズミじゃないか。状況に反応しているだけ
だ。われわれは小人だぞ。ネズミなんかより利ロだ。この事態を解明できるはずだ」
確かにわれわれのほうが利口だよ」ホーが言った。「でも、いまのところあまり利口な
ことをやってないようだ。事態は変化しているんだよ、へム。われわれも変わって、違っ
たやり方をしなけりゃならないんじゃないか」
「どうして変わらなきゃならないんだ?」とへム。「われわれは小人だぞ。特別なんだ。
こんなことがあっていいわけはない。少なくとも何か得することがなくちゃならない」
「どうして?」ホーが聞いた。
「われわれには権利がある」へムはきっぱり言った。
「何に対する権利?」
「われわれのチーズにだよ」
「どうして?」
「この事態はわれわれのせいじゃないからだ。誰かほかの者のせいなんだから、われわれ
はこうなったことで何かもらうべきだ」
ホーが提案した。「もうあれこれ事態を分析するのはやめて、見切りをつけて新しいチ
ーズをみつけたほうがいいと思うんだが」
「だめだ」へムは言い張った。「なんとしても真相を究明するんだ」
へムとホーがなおもどうすればいいか相談している間に、スニッフとスカリーは着々と
作業を進めていた。二匹は迷路の奥まで入りこみ、通路を行ったり来たりして、みつけら
れるかぎりのチーズ·ステーションでチーズを探した
新しいチーズをみつけることしか頭になかった。
しばらくは何もみつけられなかったが、やがてこれまで行ったことのなかったエリアに
入っていった。チーズ·ステーションNである。
二匹は歓声をあげた。探していたものをみつけたのだ。大量の新しいチーズを。
自分の目が信じられないくらいだった。見たこともないほどの大量のチーズだ
一方、ヘムとホーは相変わらずチーズ·ステーションCで事態を検討していた。チーズ
がなくなったいま、どんな影響が出るか不安だった。二人は失望し、腹を立て、互いに相
手をなじった。
ホーはときどきネズミたちのことを考え、彼らのところにはまだチーズがあるのだろう
かと思った。彼らも厳しい事態になって、あてもなく迷路を走りまわっているのかもしれ
ない。でも、それもやがては好転するに違いない。
スニッフとスカリーが新しいチーズをみつけ、たらふく食べているのではないかと思う
こともあった。自分も迷路へ冒険に出かけ、新鮮な新しいチーズをみつけられたらどんな
にいいだろう。そのときのことが目に見えるようだ。
新しいチーズをみつけて味わっているところを想像するにつけ、ホーは、チーズ·ステ
ーションCを離れなければと思った。
「出かけよう!」ふいに、彼は叫んだ。
「だめだ」へムはすぐきま答えた。「ここがいいんだ。居心地がいい。 ここのことなら、
よくわかっている。ほかのところは危険だ」
「そんなことはないよ」ホーは言った。「以前、迷路の中をずいぶんあちこちへ行ってみ
たじゃないか。もう一度行 ってみようよ」
「もうそんな元気はないよ。それに、道に迷ったりバカなまねをするのを面白がることは
できないんじゃないかと思う。そうじゃないかい?」
そう言われると、ホーも、しくじるのではないかという不安がよみがえり、新しいチー
ズをみつける希望もしばんだ
二人は毎日、相変わらず同じことをしつづけた。チーズ·ステーションCに行き、チー
ズをみつけられないまま、不安と失望をかかえて家に帰った。
事態を無視しようとしてみたが、だんだん寝つきが悪くなり、元気もなくなり、苛立ち
がつのっていった
自宅は英気を養う場所ではなくなった。よく眠れなくなり、二度とチーズをみつけるこ
とはできないのではないかという悪夢に悩まされた。
それでも、へムとホーは毎日チーズ·ステーションCに行き、待ちつづけた。
へムが言った。「もうちょっとがんばったらどうかな。きっとあのチーズは近くにある
んだよ。たぶんこの壁の後ろに隠してあるんだ」
翌日、二人は道具をもってきた。へムはノミを、ホーは ハンマーをふるい、壁に穴を開
けた。中をのぞきこんだが、チーズはなかった
二人はがっかりしたが、あきらめなかった。朝早くから作業にとりかかり、遅くまでが
んばった。しかし、穴が大きくなっただけだった
ホーは、勤勉に働いても成果があがるとは限らないことがわかってきた。
「たぶん」へムが言った。「腰を下ろして、事態を見守っていたほうがいいんじゃないか
な。いずれチーズは戻ってくるはずだ」
ホーもそう思いたかった。それで、毎日、休息をとるために帰宅しては、またしぶしぶ
ナーズ.ステーションCに戻った。だが、チーズは いっこうに現れなかった。
二人は空腹とストレスでどんどん弱っていった。ホーは事態が好転するのをただ待って
いるのがいやになってきた。チーズがない状態が長引けばそれだけ事態が悪化することが
わかってきた。
ホーは自分たちがどんどん不利になっていくのを悟った。
ついにある日、自分をあざ笑いたくなった。「ホー、おまえは何をしてるんだ。繰り返
し同じことしかしないでおいて、事態が好転しないのを不思議がるなんて。ほんとにどう
かしている」
だが、もう一度迷路を走りまわるのは気が進まなかった。きっと道に迷ってしまうだろ
うし、どこにチーズがあるか皆目見当がつかなかったから。しかし、そんな不安から二の
足を踏んでいると思うと、自分の愚かさをあざ笑いたくなった。
彼はヘムに聞いた。「ランニング·シューズはどこにやったんだったかな?」みつける
のにずいぶん時間がかかった。あのチーズをみつけたときに何もかも片づけてしまい、そ
んなものがまた必要になるとは思ってもいなかったのだ。
彼がランニングのしたくをしているのを見て、ヘムが言った。「本当にまた迷路に出か
けるつもりなのか?なぜチーズが戻ってくるのを待たないんだ?」
「戻ってはこないからだよ」ホーは言った。「そうは思いたくなかったけれど、もうあの
古いチーズが戻ってくることはないってことがやっとわかったんだ。あれはもう過去のものだ。新しいチーズをみつけるべきなんだよ」
へムが問いただした。「だけど、もしチーズがなかったらどうするんだ? あったとしても、みつけられなかったら?」
「わからない」とホー。それは彼自身、何度も自問したことだったし、やっばり何も変わ
らないかもしれないという不安が再び頭をもたげた。
彼は自問した。「どっちがいいんだろう、ここにいてチーズが戻ってくるのを待った
ほうがいいのか、迷路を探したほうがいいのか?」
彼は想像してみた。笑みを浮かべ、思い切って迷路へ入っていく自分を。
その姿には自分でも驚いたが、気分がよかった。ときには道に迷うだろうが、最後には
新しいチーズがみつかるに違いないと思った。そうなれば他にもいろいろといいことが起こるだろう。
それから、想像力を働かせて、新しいチーズをみつけて味わっているところを思い描いた。できるだけ現実的で細かいところまで。
穴のあいたスイス·チーズや、明るいオレンジ色のチェダー.チーズやアメリカン。
チーズ、イタリアのモッツァレラ·チーズ、とてもやわらかいフランスのカマンベール
チーズなどなどを食べている自分の姿……
こるだろう。彼は勇気を奮いおこした。
ふいに彼はへムが何か言っているのに気づき、自分たちがまだチーズステーションC
にいることを思い出した。
ホーは言った。「ねえ、へム、物事は変わることがあるし、決して同じことにはならな
い。あのころと一緒だよ、へム。それが人生だ!人生は進んでいく。ばくらも進まなく
てはならない」
ホーはやせ衰えた相棒を見やり、道理を説こうとしたが、ヘムの不安は怒りに変わり、
耳を貸そうとしなかった。
ホーは彼をばかにするつもりはなかったが、自分たち二人がどんなに愚かしく見えるこ
とかと思うと笑いたくなった。
出かける用意ができると、彼はいっそう元気が出てきた。ようやく自分を笑う余裕がで
き、見切りをつけて、先に進むことができるのだ
彼は笑って宣言した。「いよいよ迷路へ出発だ!」
へムは笑わなかったし、何も答えなかった。
ホーは尖った小石を拾うと、 ヘムにも考えてほしいと、壁に大事な考えを書きつけた。
いつものように、チーズの絵も描いた。 へムが笑ってくれて、元気を出し、新しいチーズ
を追い求めるようになってほしかったのだ。しかし、ヘムは見ようともしなかった。
こう書かれていた「変わらなければ、破滅することになる」
「もし恐怖がなかったらなにをするだろう?」
それからホーは首を伸ばし、不安げに迷路をのぞいた。いつのまにか自分がチーズのな
い状態に慣れてしまっていたことに気づいた。
これまで、ほかにチーズはないし、みつけることはできないだろうと思いこんでいた。
それが恐ろしくて身動きがとれず、だめになっていたのだ
ホーは微笑んだ。そして思ったーヘムは「チーズはどこへ消えた?」と考えているが、
自分が思うのは「なぜすぐに立ち上がり、チーズを探さなかったんだろう?」ということ
だ
迷路に足を踏み出した彼は、いままでいた場所を振り返って思った。あそこは居心地が
よかったなあ。 なじみのテリトリーに後ろ髪を引かれる。あそこでは結局チーズをみ つけ
たなあ。なじみのテリトリーに後ろ髪を引かれる。
ることができなかったのに。
彼はいっそう不安になった。本当に自分は迷路に入っていきたいのだろうか。彼は目の前の壁にある言葉を書きつけ、しばらく見つめた「もし恐怖がなかったらなにをするだろう?」
「つねにチーズの匂いをかいでみること、そうすれば、古くなったのに気がつく」
彼は考えてみた。
恐怖が役立つこともある。このままでいたら事態はますます悪化するという恐怖にから
れたら、いやでも行動を起こすだろう。だが一方、恐怖のあまり何もできなくなることも
れたら、いやでも行動を起こすだろ、
ある。
彼は右手の方に目をやった。いままで行ったことのない地域で、恐ろしくなった。
深呼吸をすると、右に曲がり、ゆっくりと見知らぬ地域に入っていった
何とか努力して進んでいこうとしたが、ふいに心配になった。あまりに長いことチー
ズ·ステーションCで待ちつづけ、その間ずっとチーズがない状態だったので、衰弱して
しまっていた。目的を達するには長い時間がかかるだろうし、もっと苦しいこともあるだ
ろう。もし再びチャンスをつかむことができなかったら、すぐになじんだ所を出て、変化
に適応しよう。そのほうがずっといいはずだ。
ホーは弱々しい笑みを浮かべて思った。「遅れをとっても、何もしないよりいい」
それから数日間、ホーはあちこちで少しチーズをみつけたが、あまり長持ちしなかった。
十分なチーズをみつけてへムのもとに持ってかえり、彼を出かける気にさせたいと思って
いたのだが
しかし、まだ確信はなかった。迷路が混乱状態になっているのを認めざるをえなかった。
すっかり様変わりしたように見えた。
少し前進したと思うと、すぐに迷ってしまう。二歩前進すると一歩後退するといったぐ
あいだ。進むのはなかなか困難だったが、再びチーズを探し求めるのは恐れていたほど大
変ではなかった。
だが、時間がたつにつれ、本当に新しいチーズがみつかるかどうか疑問に思えてきた。
食べられる量以上のものを手に入れようとしているのではないか、つまり力に余ることを
やろうとしているのではないかという気がした。それから、苦笑した。いまはその食べる
ものすらないのだ。
彼はくじけそうになるたび、自分に言い聞かせた。いまは望ましい状況ではないが、チ
ーズがないままでいるよりずっといいのだ。なすがままになっているのではなく、自分で
何とかしようとしているのだから
また、こうも言い聞かせた。スニッフとスカリーにできたのなら、私にだってやれるはずだ!
その後振り返ってみて、ホーはあらためて、チーズ ステーションCのチーズは一夜に
して消えてしまったわけではないことを悟った。チーズはどんどん少なくなり、残りもしだいに古びて、もうおいしくなくなっていた。
彼は気づかなかったが、しだいにカビてきていたのかもしれない。それでも、そのまま
手をこまねいていることもできただろう。だが、彼はそうしなかったのだ。
いまになってわかるのは、何が起きているのか注意して見ていたら、変化に備えていた
ら、あんなに驚くことはなかっただろうということだ。きっとスニッフとスカリーはそうしていたのだ。
これからはもっと注意しよう、と彼は思った。変化が起こるのを予想し、変化を求める
のだ。ぃつ変化が起きるか本能的に感じ取り、それに適応する準備をするのだ。
彼はちょっと立ち止まって休むと、壁にこう書きつけたー「つねにチーズの匂いをかいでみること、そうすれば、古くなったのに気がつく」
「新しい方向に進めば新しいチーズが見つかる」
長い時間がたったと思うころ、ホーはやっと見込みがありそうな大きなチーズステーションに出くわした。しかし、中に入ってみると空っぽで、ひどく落胆した。
「徒労に終わることばかりだ」彼は思った。もう投げ出したくなった。
だんだん体力もなくなっていた。どうすることもできないまま、生き残ることができな
いかもしれないと思っ
い かもしれないと思った。踵(きびす)を返してチーズステーションCに戻ろうか。ヘムがまだあ
を返してチーズ·ステーションCに戻ろ
そこにいれば、少なくとも独りばっちではなくなる。それから、彼はもうっ一度自問した。
もし恐怖がなかったら、何をするだろう?」
自分では恐怖を乗り越えたと思っていたが、実際はたびたび恐怖にかられていた。何を
恐れているのか必ずしもはっきりしていたわけではないが、衰弱したいま、独りで進むの
が怖かった。自覚はしていなかったが、恐怖に負けて人に後れをとっていたのだ。
へムは見切りをつけただろうか、それともまだ恐怖に立ちすくんだままだろうかとホー
は思った。それから、彼は迷路に踏み出したときの興奮を思い出した。いまこそ先へ進ま
なければならないのだ。
は思っ
彼は壁にある文句を書きつけた。相棒のヘムのために目印になればいいと思うとともに、
自分への戒めにもしたかった「新しい方向に進めば新しいチーズが見つかる」
「恐怖を乗り越えれば、楽な気持ちになる」
ホーはその暗い小路を見やり、恐怖を感じた。先に何があるのだろう? 何もないの
か? それどころか、危険が待ちかまえているのではないか? ありとあらゆる恐ろしい
ことが頭に浮かんだ。死ぬほど怖かった。
それから、彼は苦笑した。恐怖のせいで悪いほうに考えるのだと思った。そこで、もし
恐怖がなければすることをした。新しい方向に進んだのである。
暗い小路に飛びこんでいったとき、彼は笑みを浮かべていた。自分では気づいていなか
ったが、心を満たしてくれるものを見いだしたのだ。足の向くままに進みながら、先に何
かがあることを確信していた。それが何かはっきりとはわからなかったが
自分でも意外だったが、ホーはどんどん愉快な気持ちになっていった。「どうしてこん
なに気分がいいんだろう? チーズも持っていないし、どこに向かっているかもわからな
いのに」
まもなく、気分のいい理由がわかった。
立ち止まって、壁にこう書きつけた「恐怖を乗り越えれば、楽な気持ちになる」
「まだ新しいチーズがみつなかっていなくても、そのチーズを楽しんでいる自分を想像すれば、それが実現する」
ホーは恐怖に捕らわれていたのを悟った。新しい方向に踏み出したことで、解放された一
のだ。
さわ
そこには爽やかな風が吹いていて、爽快な気分になった。何度か深呼吸をすると、元気
が出てきた。恐怖がなくなると、想像以上に楽しくなるのがわかる。
長いことこんな気分になったことがなかった。こういう楽しさを忘れかけていた。
事態がいっそうよくなるように、ホーはもう一度、心の中でイメージした。チェダーか
らブリーまで(!)、自分の好きなあらゆるチーズの山に囲まれた自分の姿を、細かいと
ころまで思い描いたのだ。好きなチーズをあれこれ食べているところも想像して、楽しん
だ。こんなふうに多くのものを味わえたらどんなに愉快だろう。
新しいチーズのイメージが明瞭になればなるほど、現実味をおびてきて、きっとみつか
るという気がしてきた。
また、書きつけた「まだ新しいチーズがみつなかっていなくても、そのチーズを楽しんでいる自分を想像すれば、それが実現する」
「古いチーズに早く見切りをつければ、それだけ早く新しいチーズがみつかる」
ホーは、失ったものではなく手に入れるもののことを考えつづけた。
どうして変化は何かもっと悪いことをもたらすなどと思っていたんだろう。変化はもっ
といいものをもたらしてくれるのに。
「なぜもっと早くこうしなかったんだろう?」彼は思った。
それから、元気はつらつと機敏に迷路を走りまわった。まもなくあるチーズ·ステーシ
ョンで立ち止まり、胸をおどらせた。入り口近くに、新しいチーズの小さなかけらがいく
つかあったのだ。
見たことのないチーズだったが、すばらしいもののように見えた。かじってみると、と
ても美味だった。ほとんどを食べ、残りをポケットに入れた。あとで食べよう。ヘムにも
分けてあげよう。また力がわいてきた。
わくわくしながら、チーズステーションに入っていった。だが、意外にも中は空っぽ
だった。すでに誰かが食べつくしていたのだ。
もっと早く見切りをつけていれば、ここでたくさんのチーズをみつけることができたの
に、と思った。
彼は引き返して、へムが一緒に出かける気になったかどうか確かめることにした
戻る途中、立ち止まってこう書きつけた「古いチーズに早く見切りをつければ、それだけ早く新しいチーズがみつかる」
「チーズがないままでいるより、迷路に出て探したほうが安全だ」
チーズステーションCに戻ってみると、へムがいた。新しいチーズを差し出したが、
へムは受け取らなかった。
へムは感謝しつつも、こう言った。「新しいチーズは好きじゃないような気がする。慣
れていないから。私はあのチーズがほしいんだ。変える気はないよ」
ホーはがっかりして頭を振ると、のろのろとまた出かけた。これまでになく遠くまで来
たところで、へムと一緒でないことが寂しくなったが、ひとつ悟ったことがあって、それ
が嬉しかった。自分を幸せにしてくれるのは、ただチーズを手に入れることではない、と
わかったのだ。
もう恐怖にかられていないことが嬉しかった。現在やっていることが気に入っていた
いまはチーズがないままチーズ.ステーションCにとどまっていたときのような心細さ
はなかった。恐怖に身をすくめたりしてはおらず、新しい方向に進んだことがわかっただ
けで、元気が出て力がわいてきた。
いまや必要なものがみつかるのは時間の問題にすぎないと思った。事実、探していたも
のはすでにみつけていたのだ
彼は微笑んだ。こう悟ったのだ「チーズがないままでいるより、迷路に出て探したほうが安全だ」
「従来どおりの考え方をしていては、新しいチーズはみつからない」
ホーはあらためて思った。人が恐れている事態は、実際は想像するほど悪くはないのだ
自分の心の中につくりあげている恐怖のほうが、現実よりずっとひどいのだ。
彼自身、新しいチーズがみつからないのではないかという恐怖から、探しに出かけよう
という気にすらなれなかった。しかし、出かけてみると、先に進むのに必要なチーズはみ
つけることができた。いまは、もっとみつかると予測しているし、先のことを考えるだけ
で、胸がおどる。
以前は不安と恐怖で思考力が鈍っていた。十分なチーズがみつからないのではないか、
みつかっても望んでいるほど長くもたないのではないか、と思ったものだ。事態が好転す
ると思うより悪化すると思うことのほうが多かった。
だが、チーズ·ステーションCを出てからは、それが変わった。
以前は、チーズをもっていかれてしまうなんて間違っている、変化は間違っていると思
っていた。
いまは、予期していようといまいと、つねに変化が起きるのは自然なことだとわかった。
変化に驚くのは、予期したり期待したりしていないからだ
ホーは立ち止まって、壁にこう書きつけた「従来どおりの考え方をしていては、新しいチーズはみつからない」
「新しいチーズをみつけることができ、それを楽しむことができるとわかれば、人は進路を変える」
まだチーズはみつかっていなかったが、ホーは迷路を走りまわりながら、これまで学ん
だことを思い返した。
彼は、新しい考えが新しい行動にかりたててくれたことがわかっていた。彼の行動は、
あのチーズのないステーションに通っていたときとは違っていた。
人は考えを変えると、行動が変わるのだ
変化は害を与えるものだと考え、それに抗う人もいる。だが、新しいチーズをみつけら
れれば変化を受け入れられるようになる、と考えることもできる
すべて、どう考えるかにかかっているのだ。
ホーは壁にこう書きつけたー「新しいチーズをみつけることができ、それを楽しむことができるとわかれば、人は進路を変える」
「早い時期に、小さな変化に気づけば
やがて訪れる大きな変化にうまく適応できる」
ホーは、もっと早く変化に対応し、もっと前にチーズ·ステーションCを出ていれば、
いまごろはいろんなことがもっと好転していただろうと思った。精神的にも肉体的にもも
っと強健で、新しいチーズを探すという難題にもうまく対処していただろう。実際、変化
を予期していれば、 いまごろは新しいチーズをみつけていただろう。なのに、変化が起き
たことを認めようとしないまま時間を浪費していたのだ
彼は再び新しいチーズをみつけ、味わっているところを思い描いた。それから新しい地
域へ進んでいき、まもなくあちこちで小さなチーズのかけらをみつけ、気力と自信を取り
戻した。
これまでのことを振り返ると、多くの場所に文句を書きつけてよかったと思う。もしへ
ムがチーズ· ステーションCを出てきなら、きっとあれを目印にして後を追ってきてくれ
るだろう。
彼は自分が正しい方向に進んでいることを願うばかりだった。そして、ヘムはあの壁の
手書きの文句を読み、何とか前進してくれるだろうか、と思った。
ホーはまた考えたことを書きつけたー「早い時期に、小さな変化に気づけば
やがて訪れる大きな変化にうまく適応できる」
ついにチーズ·ステーションNと新しいチーズをみつける
ホーは過去を捨てさり、いまは現在に適応していた。
いっそう力強く速いスピードで迷路を進んでいった。まもなく、それが起こった。
永遠に迷路を走りまわらねばならないのかと思いかけたとき、彼の旅は-少なくとも
旅のこの部分は-ふいに喜ばしい結末を迎えたのだ。
これまで通ったことのない通路を進んでいき、角を曲がったところで、チーズ·ステーションNと新しいチーズをみつけたのである!
中に入った彼は、そこにあったものに驚いた。あたり一面に、見たこともないほど大量
のチーズがうずたかく積まれていたのだ。その全部がわかったわけではない。初めて見る
チーズが何種類かあったから。
しばらくは現実なのか幻想なのかわからなかった。だが、旧友のスニッフとスカリーの
姿を目にしてはっきりわかった。
スニッフは歓迎して彼にうなずいてみせ、スカリーは手を振った。ネズミたちのでっぷ
りした小さなおなかが、彼らがかなり前からここにいたことを物語っていた。
最後に
本の評価★★★(5点中3点)
どんな本を読むにしても、妄信することは禁物です(視野がせまくなるから)、学びで得られることはひとつではありません。
「ビジネス書」というジャンルは真理を物語っているように見えても、読み手は「メリット」の部分に目が行きがちです。
わかりやすく言えば「こうしたほうがお得だ」または「自分はこうはなりたくない」というメッセージを受け取ってしまいがちなんです。
確かにこの本は、この本で面白い部分があります。「チーズ」に例えたのが僕は「すごい」と思いました。
幸せをチーズととらえると、「いつかなくなってしまう」というのがわかりやすいからです。
ただ、この本を読んで、今僕らが「変化すべきだ」「進むべきだ」と思うべきかどうか、については違うと思います。そもそも「チーズ」がなくなっていないのならば、まだ変化すべき部分を探す段階であるので、
むやみに変化しようとするのは危険でしかありません。
かといって「自分は過去から見て変化したかどうか??」についても考えなければいけません。
「私は1年前に望んでいた変化とは違う変化に満足しきっていないだろうか?」という自問自答は、この本を読んで考えるべき課題でしょう。
いろんな解釈を学び、自分に最適な課題を見つけることが大事ではないかと思います。本書は「ひたむきに進め!!」なんて言ってませんし、「変化したほうが幸せ」だなんてこともないのです。
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ちなみにですがこの本には続編があります。
↓の方に進めば続編「迷路の外にはなにがある??」のリンクがありますのでを見てみてください。