(6冊目・前編)「幸せになる勇気」岸見一郎 古賀史健 内容紹介

2021年3月31日

この本は対話形式の小説です。
僕にはとっつきにくい印象だったのですが、最後まで読むとスッキリする内容でした。
まちがいなく良書であります。
ただ、分量のある本ですので、読むのは覚悟が必要になります。

嫌われる勇気続編「幸せになる勇気」岸見一郎 古賀史健 (内容紹介ブログ)

幸福とは、その場にとどまっていて享受できるものではありません。踏み出した道を歩み続けなければならない。

・哲学と宗教の違い

真理の探究のためにわれわれは暗闇に伸びる長い竿の上を歩いている。常識を疑い、自問と自答を繰り返し、どこまで続くかわからない竿の上を、ひたすら歩いている。するとときおり、暗闇の中から内なる声が聞こえてくる。「これ以上前に進んでも何もない。ここが真理だ」
そしてある人は、内なる声に従って歩むことをやめてしまう。竿から飛び降りてしまう。そこに真理があるのか?私にはわかりません。あるのかもしれないし、ないのかもしれない。ただ、歩みを止めて竿の途中で飛び降りることを、わたしは「宗教」と呼びます。哲学とは、永遠に歩き続けることなのです。そこに神がいるかどうかは、関係ありません。

哲学〈フィロソフィーphilosophy〉の語源は、ギリシア語の〈フィロソフィアphilosophia〉。
フィロソフィアは「知を愛する」という意味を持ちます。つまり哲学とは「愛知学」であり、哲学者は「愛知者」なのです。
これが完全なる「知者」になってしまったら、哲学者ではありません。近代哲学の巨人カントは「我々は哲学を学ぶことはできない。哲学することを学べるだけである」と語っています。
哲学は学問というより、生きる態度なのです。

・教育の目標は自立である

まず「課題の分離」を説明する。

人生のあらゆる物事について「これは誰の課題なのか?」という観点から、「自分の課題」と「他者の課題」を切り分けて考える。
たとえば私が上司に嫌われていたとする、なんとか好かれよう、認めてもらおう、そんな努力をするのが普通です。
しかしアドラーからすれば、上司が私にどのような評価を下すのか、それは上司の課題(他者の課題)であって、私にコントロールできるものではない。

「あなたは他者の期待を満たすために生きているのではない」し「他者もあなたの期待を満たすために生きているのではない」のである。
だから他者の視線におびえず、他者から承認も求めない。さらに他者の課題にも介入してはいけないし、自分の課題に他者を介入させてはいけない。

これが課題の分離である。

そして本書では、子供の問題を中心に物語は進んでいく。勉強は「子供の課題」であり親が介入すべきものではない。
ならば教育とはなんなのです???というのが、本書の主人公である「青年」の問いであった。
「青年」は教員という職務に就いていたので、子供の課題という切り口からアドラーの思想を否定し、アドラーから解放されるために哲人先生と討論する。

哲人先生は「アドラーにとって教育は最大の希望だった」と語り、また「カウンセリングは治療ではなく再教育の場だと考えます」と語る。

そして人はみな「自由」を求め、無力で不自由な状態からの「自立」を求めている。
教育とは「介入」ではなく自立に向けた「援助」なのだと。

ここから、4つの大切なことについて話は広がっていきます。
①自立すること
②社会と調和して暮らせること
③わたしには能力がある、という意識
④人々はわたしの仲間である、という意識

「自立」という目標を置き去りにしてしまったら、教育やカウンセリング、あるいは仕事の指導も、すぐさま「強要」へと変貌します。
われわれは、カウンセリングするにしても、教育するにしても「援助」の姿勢を大切にしなければいけません。

・尊敬について

「尊敬とは、目の前の他者を変えようとも操作しようともしない。なにかの条件をつけるのではなく「ありのままのその人」を認めること」
そしてもし、「ありのままの自分」を誰かから認められたならその人は大きな勇気を得るでしょう。尊敬とは、いわば勇気づけの原点でもあるのです。

教育の入り口は、まずはあなたから「生徒たち」を尊敬することにある、という話です。

・他者の関心事に関心をよせよ

尊敬のボールはそれを投げたときにだけ返ってくるものです。壁に向かってボールを投げるようなものです。しかし「ボールをよこせ」と壁に向かって叫んでも、何も起こらない。

こう聞いたとき青年は「ボールを投げる「わたし」の尊敬はどこから生まれるのです?なにもないところからボールは生まれないですよ!」と言います。

ここで「他者の関心事に関心を寄せる」という話が出てきます。

それは他者がなにを好きかを、理解する行為です。「他者の目で見て他者の耳で聞き他者の心で感じること」が重要だといいます。

その技術や態度のひとつとして、「共感」があげられます。
「もしも自分が彼と同じ心をもち、同じ人生を持っていたら」と考えること。
その自分は、たとえば勉強という課題を前にどのような態度をとるか、なぜ勉強を拒絶するのか、生徒の目線で想像できるはずです。

・「臆病は伝染する、そして勇気も伝染する」ということ

教員が生徒たちと対等な存在と接すること、それは逆に生徒をバカにしているのではないか?と青年は問いかけます。
哲人はその問いに、いいえそれは違います。生徒たちに尊敬を教えてほしいのです。と返答します。

「臆病は伝染する、そして勇気も伝染する」と言ったのはアドラーだそうです。
もちろん、尊敬も伝染すると哲人は付け加えます。

暗闇で松明(たいまつ)を掲げて歩くのは、せいぜい半径数メートルしか明るくならないので、
あなたが一人で歩くときはとても心細く思います。暗闇には誰もいない。ひとりきりの世界だと一見思うでしょう。
しかし、あなたの掲げた松明の火は、数百メートル先の離れた誰かの目にとまり「あそこに行けば明かりがあって人がいるぞ」と、
やがてあなたのまわりには、その明かりを求めてやってきた人々が集まるのです。

・変われない本当の理由

青年は言いました「徹底的に叱られ続けた生徒たちでさえ、のちに『あのとき厳しく指導してくださって、どうもありがとうございました』と感謝するのですよ!
この現実をあなたはどう説明するのですか???」と。

ここで、「嫌われる勇気」の再学習となります。

人間は現在の目的にそって生きているのです。過去の原因に突き動かされる存在ではありません。

われわれはいつでも自己を決定できる存在である。あたらしい自分を選択できる存在である。にもかかわらず、なかなか自分を変えられない。変えたいと強く願いながらも、変えられない。いったいそれはなぜなのか?

その答えは、本当は変わりたくないからです

哲人は言います。
たとえばいま、あなたが人生に思い悩んでいるとしましょう。自分を変えたがっているとしましょう。しかし、自分を変えるとは、「それまでの自分」に見切りをつけ、否定し、二度と顔を出さないよう、いわば墓石の下に葬り去ることを意味します。そこまでやってようやく「あたらしい自分」として生まれ変わるのですから。
だから人は変わろうとしないし、どんなに苦しくても「このままでいいんだ」と思いたい。そして現状を肯定するための「このままでいたい」材料を探しながら生きることになるのです。

そして「今の自分」を積極的に肯定しようとするとき、その人の過去はどのようなトーンで彩られますか?

答えはひとつ。すなわち、自分の過去について「いろいろあったけど、これでよかったのだ」と総括するようになる。

哲人は言います「あのとき厳しくしてくださって、どうもありがとうございました」と感謝の言葉を述べる生徒。彼らは「今の自分」を積極的に肯定しようとしているのです。結果、過去のすべてがよい思い出になる。
ですから、この件から「強権的な教育」を認めるわけにはいけません。

青年は言います「じゃあ中学や高校時代の厳しく理不尽な教師連中に不満をもっている僕はどう説明するんです、間違っても感謝などしてません、あの監獄のような学園生活が良い思い出になるなど、ありえるはずがない!」

哲世は「それはあなたが今の自分に満足していないからでしょう」と返しました。

・悪いあの人、かわいそうな私

今自分が陥っている悩み、家族や友人に相談事を持ちかけるとき、いま自分がなにを話しているのか自覚することはなかなか難しいものです。
しかし視覚化すると、結局この二つしか語っていないことがよくわかります。きっとあなたも心当たりはありますよね?

「悪いあの人、かわいそうな私」

でもわれわれが語りあうべきことは、ここにはないのです。一時のなぐさめにはなりえても、本質の解決にはつながらない。
ここで大切なことは「これからどうするか」を語り合うことです。
「目の前にいるあなた」を知れば十分ですし、原理的にわたしは「過去のあなた」など知りようがありません。
それに、あなたが語る過去は「いまのあなた」によって巧妙に編纂(へんさん)された物語にすぎない。

 

後編につづく

(6冊目・後編)「幸せになる勇気」岸見一郎 古賀史健 内容紹介

・最後に光彦からのメッセージ(口コミ)

この本の評価は4点★★★★☆(5点評価中)とします
最後に感動が待っておりました。
話が右へ左へ、なかなか本筋通りに進みませんが、最後に感動する展開が待っています。
全ての物語につながりがあり、最終的にすべての言葉につながりがあったことが判明する喜びがあります。
一貫性がある、と言っても正しいかもしれません。

後編は近日中にアップする予定です。よろしくおねがいします!

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